【債務整理日記|8ページ目】残クレのハリアーを手放すと決めるまで

「他は我慢しても、車だけは手放したくなかった」

今思えば、かなり身勝手な考えだったと思います。

それでも当時の私にとって、ハリアーは単なる移動手段ではなく、

  • 家族の生活の一部
  • 中年男のプライド
  • 現実からの隠れ家

という存在でした。

▪️好きな車だけは、残したかった

愛車はトヨタ・ハリアー

レクサスや輸入車ほどではありませんが、世間的には「高級SUV」と言われる車です。

ガソリン車のグレードで、オプションや諸費用込みで約500万円。

残価設定クレジット、いわゆる「残クレ」で新車を購入しました。

月々の支払いは、保険料込みで約5万2,000円。

燃費は良くなくて、街乗りでリッター10kmちょっとでした。

それでも、

「他は我慢しても、好きな車には乗りたい」

そう思っていました。

ただ、今振り返ると

「他も大して我慢していなかった」

というのが正直なところです。

▪️残クレという選択

残クレは、月々の支払いが抑えられます。

色々と言われていますが、従来であれば手が届かない車に乗れるのは、良い仕組みだと思います。

ただそれは、月々の金額が払えればの話。

月5万円台という金額は、すでに多額の借金を抱える私には無理があったのです。

それでも私は数字を見て「いける」と思ってしまいました。

当時の私は、

「支払えるかどうか」

ではなく、

「その車が欲しいかどうか」

で判断していたのだと思います。

▪️ハリアーを残したかった理由

債務整理を考え始めた当初、

正直なところ「ハリアーだけは残したい」と思っていました。

理由はいくつもあります。

  • 生活の足として必要だった
  • 純粋に愛着があった
  • 妻は借金のことを知っているが、親や子供たちは知らない
  • 親戚や近所の人に、車がなくなると不自然に思われる
  • 会社の車好きの人ともハリアーの話をよくしていたから、会社にバレるリスク
  • ディーラーの担当者とも長い付き合いで、借金苦を知られるのが恥ずかしかった

どれも言い訳だと言われれば、その通りです。

ただ当時は、どれも本気で考えていました。

▪️一度は考えた「任意売却」

当時、ハリアーの新車は納車まで半年以上待ちの状態でした。

中古車市場も高騰していました。

ネットを見ると

高価買い取り!

の文字が躍ります。

「もしかしたら、ローン残債以上で売れるかもしれない」

そう考え、任意売却も検討しました。

もし余剰が出れば、そのお金を借金返済に回せます。

一見、現実的な選択肢に思えました。

しかし、すぐに壁にぶつかります。

ハリアーを購入した時、

1年間は転売しない

という誓約書を書いていました。

誓約書の法的な拘束力はさておき、所有権がクレジット会社にある以上、勝手な売却は困難でした。

▪️弁護士との相談で方針が固まる

弁護士との相談が進む中で、債務整理手続きの方針は「任意整理」から「個人再生」へと変わっていきました。

そして、はっきりと説明されました。

個人再生では、特定の債権だけを優遇して返済することはできません

つまり、ハリアーのローンだけを残す、という選択はできないということです。

制度上、厳格に守らなければならない部分でした。

「受任通知書を出す前であれば問題ない」

という考えも頭をよぎりましたが、借金の状況に、そこまでの時間的余裕はありませんでした。

▪️「手放すしかない」と腹をくくった日

選択肢を一つずつ消していくと、残る答えは一つしかありませんでした。

「ハリアーは、手放すしかない。」

この時点では、まだ引き揚げの日程も決まっておらず、具体的な話も進んでいませんでした。

ただ、身勝手ながらも

「守りたいと思っていた一線が崩壊する」

という感覚だけは、はっきりとありました。

▪️忘れられない、一本の電話

その時はすでに任意売却を諦めていました。

手続き上、ディーラーに連絡をする必要はなかったと思います。

それでも、長い付き合いだったこともあり、黙って終わるのは違う気がしました。

いつものようにハリアーの中から、ディーラー担当者の携帯に電話し、こう伝えました。

「実は残クレ以外にも多額の借金があり、返済を続けることが難しくなりました。法的手続きに入るのでご迷惑をおかけすることになると思います。本当に申し訳ありません」

担当者は驚いていましたが、返ってきた言葉は意外なものでした。

迷惑というのはクレジット会社にはそうかもしれませんが、会社や自分はそんなことありません。気にされないでください

そうなのかもしれません。

売ってなんぼの営業マンにとって、売り終わった車のことは余り関係ないのかもしれません。

それでも

気にされないでください

と言ってもらったことで、胸の奥に溜まっていたものが、少しだけ軽くなった気がしました。

▪️まとめ

後になって思います。

これは、車を手放す話ではありませんでした。

見栄やプライド、そして過去の自分と決別する話だったのだと思います。

次回は、

実際にハリアーが引き揚げられた日のことを書きます。

ガレージが空いた朝の、あの静けさも含めて。

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