2024年2月1日、あおぞら銀行は今期(2024年3月期)決算が赤字に転落することを明らかにしました。
4月1日付の社長交代も発表しています
あおぞら銀行にいったい何が起こっているのでしょうか?
◆赤字に転落した理由
あおぞら銀行が赤字に転落する理由は以下の2つです。
①有価証券の売却損…410億円
②米国不動産ローンへの追加引当…324億円
①は、あおぞら銀が保有する外貨ETFやモーゲージ債が、米国金利上昇の影響で急落したため損切りするものです。
①の方が金額は大きいですが、他の銀行も軒並みやっていることで、想定内のもの。
むしろ市場を驚かせたのは②の方でした
あおぞら銀は、海外不動産ノンリコースローンの残高が2,602百万米ドルあり(2023年9月期)、うち72%がオフィス向けとなっています。
金額(百万米ドル) | 比率 | |
オフィス | 1,873 | 72% |
住宅 | 520 | 20% |
ホテル | 104 | 4% |
倉庫 | 78 | 3% |
リテール | 26 | 1% |
(計) | 2,602 | 100% |
更にその内の95%は米国不動産が対象だったのですが、新型コロナ以降リモートワークが普及したことで、アメリカのオフィス不動産ニーズが消失。
借り手の返済能力はみるみる失われていきました
あおぞら銀の米国不動産向け融資は「ノンリコースローン」なので担保物件からの賃料収入や売却益のみを返済原資としています。
返済が滞った場合は担保物件を処分して回収しなければなりませんが、不動産価値が下落しているため、融資回収のめどが立たなくなったのです。
そうして積まれた貸倒引当金は324億円。
同行の谷川啓(たにかわ・けい)社長は、
今後も個別案件ごとに若干の損失があるかもしれない
と、慎重姿勢を崩していません。
(谷川啓社長↓)
【トップ近況】あおぞら銀行・谷川啓社長、3年後の人件費を20億円増やす方針 「初任給を業界最高水準に」https://t.co/gcHg6z9Fa2
来年4月に入行する大卒の初任給は26万5000円とする。#zakzak
— zakzak (@zakdesk) August 31, 2023
◆社長交代
その谷川社長ですが、2024年4月1日付で平取(取締役執行役員)へ退くことも合わせて発表されました。
タイミング的には赤字計上の引責辞任と見られますが、
後継者計画は1、2年前から進めており、ちょうどこのタイミングになった
と、引責辞任を否定しています。
引責を否定する必要性はないと思いますが、プライドなのか本当にたまたまこのタイミングなのか…
ちなみに谷川社長は、2024年6月25日開催予定の第91期定時株主総会をもって、任期満了により取締役を退任予定です。
新しい社長には、大見秀人(おおみ・ひでと)副社長が昇格します。
(大見秀人副社長↓)
あおぞら銀の大見新社長、注力分野見直し 15年ぶり赤字https://t.co/U1JRRCAeTH
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) February 1, 2024
あおぞら銀行は新たな経営体制のもとで、2024年度は最終黒字を目指すとしています。
◆株価
あおぞら銀ショックが発表された2月1日の取引では、あおぞら銀の株価はストップ安で終了。
翌日も一時前日比19%安の2080円と、2021年2月以来の安値を付けました。
また、千葉銀行、ふくおかフィナンシャルグループ、京都フィナンシャルグループなどをはじめ、地銀株が総じて売られる展開に。
マーケットは、
同社と同じような状況にある地銀が他にも存在する可能性がある
と見ているようです。
◆格付け
R&I(格付投資情報センター)は2月2日、あおぞら銀行の格付け変更を発表。
発行体格付けは「A-」で維持した上で、方向性を「ポジティブ」→「安定的」に変更しました。
S&P(S&Pグローバル・レーティング)は2023年12月21日、長期発行体格付けを「トリプルBプラス」→「トリプルB」に引き下げています。
◆まとめ
という訳で今回は、いわゆる「あおぞら銀ショック」をご紹介してきました。
金融庁で金融機関のモニタリングを担当する屋敷利紀(やしき・としのり)審議官は、
現段階ではあおぞら銀は特殊なケースであり、他行のエクスポージャーに対する懸念はない
との認識を示しました。
本当に他銀行は大丈夫なんでしょうか?
今後の展開から目が離せません。
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